
第31回日本インテリアプランナー協会中部(CIP)定期総会

とき 2026年6月13日(土)13:30~15:00
ところ 愛知県名古屋市緑区有松 竹田家住宅:書院
日本インテリアプランナー協会中部の通常定期総会を開催いたしました。
会場には有松東海道を代表する絞商の旧家で、江戸から明治にかけての繁栄を伝える代表的な町家建築である竹田家住宅(名古屋市指定文化財·都市景観重要建築物)の書院をお借りし、厳かな和室で総会を取り計らわせていただきました。魅力的な会場ということもあって27名の参加で大変活発な総会となりました。
総会後は、IP試験の合格者の表彰式、庭園や敷地内の茶室「栽松庵」を拝見したのち、記念講演として、名古屋の伝統工芸「有松鳴海絞り」を、世界的なハイエンド·ラグジュアリー市場へと押し上げたブランド 「suzusan」のCEO兼クリエイティブディレクター村瀬弘行氏に有松の歴史とこれからの伝統工芸の活路についての記念講演をいただきました。大変興味深いお話を伺うことができ、参加者全員大変充実した体験となりました。村瀬氏の講演については下記に掲載しておりますので、ぜひ一読ください。
講演終了後は、有松の旧東海道の古い街並みを散策し、その後築150年の伝統的建造物家屋の寿限無茶屋にて懇親会。日本インテリアプランナー協会(JIPA)の加藤会長、日本インテリアプランナー協会九州(JIPAQ)の横尾様、中部デザイン団体協議会(CCDO)の井関会長にもご参加いただき、正準会員と賛助会員合わせて総数31名で大変盛況なひと時を満喫することができました。






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第31回通常定期総会記念講演
「日常に息づく工芸ー地域文化が生み出すこれからの空間の作り方」
講師:村瀬 弘行 氏(suzusan CEO/クリエイティブディレクター)
今日は私たちが400年続く有松絞りの技術をどうやって世界へ届け、産地を守ってきたのかをお話しします。
■ 400年の歴史を持つ「有松絞り」の凄さ
有松の町は江戸時代、山賊除けの防犯対策として作られたのが始まりです。当初は産業が何もなかったのですが、東海道のお土産として「絞り染め」の手ぬぐいを売り出したところ、これが大ヒットしました。尾張藩が「有松以外で作ってはならぬ」という保護政策(専売制)を敷いてくれたおかげで、町中で技法の開発競争が起き、世界でも類を見ない「200種類以上の技法」がこの狭い町に生まれました。今や「SHIBORI」は世界共通語となっています。
■ 26歳、ボロボロの車でヨーロッパへ突撃!
私は元々アートを学ぶために20歳で渡欧しました。実家は絞り職人でしたが、着物離れで大ピンチでした。父からも「家業を継げ」と言わたことは一度もありませんでした。
転機はイギリスのクリエイターたちが私の実家の絞りを見て、先入観なしに「美しい!」とダイレクトに感動してくれたことでした。その姿を見て「場所を変えれば、この伝統は新しい価値になる」と確信しました。
2008年、26歳の時にドイツ人の相棒とブランド「suzusan」を立ち上げました。お金もコネもありません。下請けのままでは職人さんに安定して仕事を回せないので、自社ブランドを作って、床に穴が開いたボロボロの車に商品を詰め込み、ヨーロッパ中のセレクトショップにアポイント無しの突撃訪問を繰り返しました。何度も断られながらも、泥臭く取引先を広げていったのです。
■ 伝統の因数分解:「素材」と「用途」は自由でいい
世界で戦うために、私は伝統工芸を【素材】【技術】【用途】の3つに分解しました。
それまでの有松絞りは「木綿の浴衣」が定番です。しかし、これでは外国人のライフスタイルには溶け込みません。そこで「残すのはコアである『技術(手絞り)』だけ。素材と用途は今の世界に合わせて自由に変えていい」と方針を定めました。例えば、素材は木綿だけでなく、極上のカシミアやシルク、アルパカへ。用途は浴衣ではなく、現代の「ストール」や「ニットウェア」、そしてインテリアの「照明」へと対象を広げました。
この挑戦が実を結び、なんと「クリスチャン·ディオール」からオートクチュールドレスのオファーが飛び込んで来ました。有松の90歳のおばあちゃん職人たちが命がけで絞った生地が、ニューヨークのレッドカーペットでスポットライトを浴び「おばあちゃんのもの」だった有松絞りが世界の最先端に繋がった瞬間でした。
■ 産地の未来:下請けから「自社工場」へのイノベーション
伝統工芸の現場はどこも深刻な高齢化が進んでいます。有松も完全な分業制なので、職人が一人辞めれば技術が途絶える危機にありました。
そこで私たちは町の中に、すべての工程を完結できる自社工場を作りました。今では全国から「有松絞りをやりたい」という若いスタッフが集まり、親父と私の2人だった会社も今は23人の大所帯になりました。
私たちがこれから目指すのは、2つの軸です。
1つは「From Local(地方から世界へ)」。これまでの失敗と成功のデータを、日本全国240以上の他の伝統工芸産地にシェアして、業界全体をボトムアップすることです。
もう1つは「To Local(世界から地方へ)」。 海外のバイヤーや観光客に有松へ来てもらい、職人と話し、自分で絞りを体験する「1日ディカバリーツアー」で、町の価値を体感してもらうこと(モナコのロイヤルファミリーが来られた時は、美しさに涙を流して感動してくださいました)。
■ 最後に
私は、あえて「これぞ日本だ」「有松絞りだ」と殊更に主張しなくてもいいと思っています。世界中の誰かが「これ、すごく素敵だな」と手にとって、ひっくり返したタグに「Made in Japan」「Arimatsu」と書いてある。それが一番かっこいいし、風通しのいい、未来へ繋がるものづくりだと思っています。